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プライバシーの侵害だ

匿名劇壇という劇団を主宰する福谷圭祐のブログ。このブログは基本的に自分のためだけに使おうと思います。考えをまとめたり、情報を整理したり。ま、もちろん他人の目に触れることは意識して書くけれど。 でも、あまり読まれたくはない。だからタイトルは、 「プライバシーの侵害だ」 。

キミって標準体型?

お世話になっております。

 

匿名劇壇『レモンキャンディ』、今週木曜日からスタートする。

えっちらほっちら、作り上げてきた。基本的に演劇の稽古なんてそりゃまあ地味なもんで、コツコツ小石を拾ったり、コトコトシチューを煮込んだり、静かに進めてきた。それでもひとつの作品の稽古中に、「これは良くなるぞ!」という世紀の大発見のようなものが、一度や二度くらいは出てくるもので。今回の『レモンキャン

 

ディ』でも、「ああ!これでもうサイコーの作品になるよ!」となるような発見が、4月24日にあったのでした。それまでは不安を抱えながら、「でも、この小石を拾っていけば必ず…」とか「あと、二週間煮込めば絶対に…」とか、そんなふうに稽古を進めていた。4月24日以降、僕は安心しきっている。「面白くないのではないか…?」という不安から解き放たれて、あとは「ミスをしないように」「芝居をこなさないように」「無意識の瞬間を無くすように」していく作業だ。

それはそれは地味だが、そういうもんなのである。ここでまた「もう一度、あんな世紀の大発見を…!」と考えてしまうのは良くない。次の世紀の大発見は、まず先の世紀の大発見を「当たり前」にしてからしか見つからないのである!

 

ちなみに『レモンキャンディ』の世紀の大発見とは、「落下中なんだから、怖くてたまらないじゃないか!」というものだった。「……当たり前やん?」と思うなかれ。リンゴを見たニュートンのように、天を仰いだコペルニクスのように、大発見とはそんなもんなのだ。

 

さて、もっともっと皆様に興味を持ってもらうために、なんとかこの作品を「オススメ」したいものだが、これがまた難しい。「オススメ」するためには、「この作品のここが良いんですよ!」を言わなくちゃいけない。その情報はある程度、その「良さ」をオミットしてしまうことにも繋がる。例えば、小説の帯や宣伝で「この大どんでん返しを見逃すな!」的なことが書いているのは、やはり基本的にはどうかと思っていて。ネタバレ云々ではなく。

 

世の中には「大どんでん返し」フェチが一定数いて、そこに対する広告効果がバツグンだとは思う。でも、「この本は大どんでん返しがウリの本だ」と思って読んで得られるのって、「ええっ!こんな展開に!?」という喜びじゃなくて、「さぁ…来るぞ…どんでんが来るぞ…!どうなるんや…!わからんけど…とにかくどんでんが来るぞ…!あ…!どんでんが…!どんでん来た!ああ!どんでん!どんでんっ!どんでんっ!ビュルルッ!ビュルルルルッ!」っていう喜びじゃないですか。

 

まるで「どんでん返し」の「どんでん返し性」そのものを盲愛するような。「女子高生」の「女子高生性」そのものを盲愛するような。それが良くない、というつもりはないんだけど、「それって、ちょっと違くねー?」と思うところがある。要するに、「どんでん返しだから面白い」とか「女子高生だからカワイイ」んじゃないはずなんですよ、本来は。

 

だけど、それがパッケージだから。オススメするのはパッケージだから。もし僕がここで、「レモンキャンディは、死を目前にした人間の生き様を描いているところがオススメです」なんて言おうものなら、それがあっという間にパッケージになって、結果「だから、面白い(だから、面白くない)」になってしまうかもしれない。そうじゃなかったかもしれないのに。単に「女優が可愛い」から面白い(面白くない)、かもしれないのに。かといって、「女優が可愛い」だってパッケージにするつもりは一切ないけれど。

 

……おいおい、こんなやつが主宰の劇団、どうやって広報していけばいいんだよ。

 

 

高校生のとき、卒業文集みたいなやつの寄せ書きみたいなやつに、友達がこんなことを書いていた。

 

『      』

 

 

空白。カギカッコだけ。多分、彼もパッケージを嫌ったんだと思う。一方、僕はどうしたかというと、「クラスメイト全員分の名前を書き、全員分へのメッセージを書いた」のであった。そう広くないスペースに、細々と。どっちかというと僕が根暗で、彼がパリピだったので、やり口が真逆なような気もするが、根底にあったであろう「パッケージされたくない願望」が共通してたんだろうな。

 

ただ、いま、ほかのクラスメイトが書いたものを全く思い出せない。多分、「楽しかった」とか「また会おう」とかそんなのだったのかな。なんだか、馬鹿みたいだ。僕と彼が、ほかの誰より自分をパッケージングしてしまってるじゃないか。ある種の無個性であろうとする強烈な個性が、ぷんぷん臭って頭が痛いじゃないか。「俺、こういう人だから」と、アピールが過ぎてどうしようもないじゃないか。そんでしかも、多分誰も僕がそんなふうに書いたなんて覚えちゃいないんだろーなー……。

相手も行司も観客もいないひとり相撲で、自分が太ってるかどうかもわかんねーよ。なあ、俺は標準体型かい?

 

今回の『レモンキャンディ』、豊かな時間がたくさんあります。笑えばいいのか、泣けばいいのか、見下せばいいのか、見上げればいいのか、どうやって見たらいいのかを迷う、豊かな時間がたくさんあります。それは前作『戸惑えよ』でやろうとして、失敗したことでした。それが、うまくできて、嬉しいのです。

 

という、前作を見た人専用のパッケージを残して、このブログを終わります。

どうか、見に来てくださいませ。比べ合いっこしましょ。

 

なあ、君は、標準体型かな?

 

(了)

 

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