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プライバシーの侵害だ

匿名劇壇という劇団を主宰する福谷圭祐のブログ。このブログは基本的に自分のためだけに使おうと思います。考えをまとめたり、情報を整理したり。ま、もちろん他人の目に触れることは意識して書くけれど。 でも、あまり読まれたくはない。だからタイトルは、 「プライバシーの侵害だ」 。

恋なら盲目、愛なら中毒。

恋なら盲目、愛なら中毒。

 

 有料のアダルトライブチャットで見つけたパラちゃんは、中原唯奈にそっくりだった。顔や髪形や話し方、さらには目元のほくろまで、中原唯奈にそっくりだった。視聴者に煽られて、上半身を露わにするパラちゃん。乳房もそっくり、と言いたいところだったけれど、初めて見たのでそれは知らない。それに、こんなふうに煽情的でいやらしい表情をする中原唯奈も、僕は知らなかった。ポイントが無くなってきたので、すぐに追加した。

 可愛いね、というコメントが流れる。彼女はそれを読み上げて、ありがとうと言った。パラちゃんはずいぶん慣れた様子で、五百人余りの視聴者をあしらっていた。「オナニーしないの?」「よだれ垂らして」などの下卑た注文に微笑みで返し、「千人いったらオナニーするからね。みんな、それまでイっちゃダメだよ」と言った。ライブチャットの収入は、どれだけ視聴者がポイントを消費するかで決まる。彼女は、ここでのビジネスを心得ているようだった。彼女の意のままに、一分で約五十円が消費されていった。

 僕は、興奮していた。以前から密かに中原唯奈に想いを寄せていたからか、パラちゃんがいやらしいからかはわからない。これは、中原唯奈本人なのだろうか。それとも、似ている別の人物なのだろうか。興奮している自分に戸惑っているように、股間は微妙な反応を示していた。鼻息は荒く、体温も上昇しているが、股間だけが反応を迷っていた。

 僕は、中原唯奈にラインを送ることにした。数十秒後、パラちゃんはスマートフォンを手に取って、ソファーに投げ捨てた。……この時間のずれは、ライブ配信のタイムラグなのだろうか。それとも、今パラちゃんが受信した「なにか」は、僕の送ったメッセージとは違うものだったのだろうか。ラインには既読がついているし、パラちゃんのスマートフォンカバーは、中原唯奈のそれと同じものだったけれど。彼女はどこからどう見ても、中原唯奈そのものだけれども。そしてきっと、事実、中原唯奈なのだろうけれど。

「それじゃ、千人いったから、オナニーするね」

 パラちゃんはそういって、下着の上から股間に手をあてがった。パラちゃんの指が艶めかしく動き出す。僕の股間は、なおも反応に迷っていた。中原唯奈だったら勃起するのか、パラちゃんだったら勃起するのか、それさえもわからない。僕はいま、何を求めているのだろう。僕は、この子がどっちだったらいいんだろう。この子がどっちであることを、僕は望んでいるのだろう。「今日は電マも用意してるんだよ」と、パラちゃんは言った。コメントが盛り上がる。電マの使用を囃し立てる。「でも、電マ、すぐイっちゃうからなァ」と、パラちゃんは笑った。そして股間に電マをあてがい、宣言通りすぐに嬌声をあげ、身体を痙攣させた。同時に果てた男が大勢いたらしく、「出た」などのコメントが流れ出す。そして、視聴者数も一気に減った。現金なものである。

「出ちゃった?でも、まだ出るよね?うふふ」

 彼女はすぐにフォローした。これで、何人かの男は視聴を続けることだろう。

 彼女は、実に魅力的だった。いやらしさだけでなく、気配りがあった。ライブチャットを覗いている男たちを蔑むような言動は一度もしない。むしろ、しきりに感謝を口にしていた。「見てくれてありがとう」と、笑顔を絶やさなかった。そしてなにより、彼女自身が望んで、楽しんでこの配信を行っているということが、画面からありありと伝わってきた。もしかすると、違うのかもしれない。だけど、そう思わせることに見事に成功していた。例え、「本当はこんなことしたくないけど、お金のためにやっている」のだとしても、パラちゃんは微塵もそんな気配を出さなかった。ただひたすら、えっちで、いやらしくて。

 

 だからこそ。

 中原唯奈はそうではない。中原唯奈は、辛いはずだ。中原唯奈は、望んでこんなことをするような女の子ではない。もしかすると、誰かに脅されているのかもしれない。あるいは、何か心の病を抱えていて、承認欲求が高まって依存症のような状態になっているのかもしれない。ただ、お金に困っているのかもしれない。

 だったら、中原唯奈を救えるのは、僕だけだ。

 

 極太バイブでパラちゃんが昇天するのと同時に、僕も無理やり精液を出した。勃起も曖昧なまま、搾り取るように出した。これで僕に残っているのは、純粋な愛だけだ。ちくしょう、憎きパラちゃんめ。中原唯奈にとり憑きやがって。

 

 唯奈ちゃん、今、助けに行くからねっ!

 

 家を飛び出して中原唯奈の元へ走っていくさなか、僕はなぜか、ファンがアイドルを殺した事件のことを思い出した。全く関係がないのに、不思議だなぁ。

 

(了)