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プライバシーの侵害だ

匿名劇壇という劇団を主宰する福谷圭祐のブログ。このブログは基本的に自分のためだけに使おうと思います。考えをまとめたり、情報を整理したり。ま、もちろん他人の目に触れることは意識して書くけれど。 でも、あまり読まれたくはない。だからタイトルは、 「プライバシーの侵害だ」 。

雑すぎるブログだが、ほんと最近投稿できてないので、無理やり諦めて投稿してしまおう

お世話になっております。

 

突劇金魚『僕のヘビ母さん』、終了いたしました。

ダブルキャストもロングランも、確かそんなに経験がなかったはず。民家で公演することもたぶん初めてだと思うし、被り物をするのも、白塗りをするのも初めてだった。『僕のヘビ母さん』、とても新鮮な経験となりました。力不足を痛感しつつも、一生懸命楽しく取り組むことができました。

 

僕は、「演じる」ということが苦手です。「成りきる」ということが苦手です。あと、できないことはやらないタイプの人間です。だから、「ヘビ母さんを演じる」「ヘビ母さんに成りきる」というアプローチは、しませんでした。できないし。僕、ヘビ母さんじゃないし。福谷圭祐だし。なんで役者やってんだよ、って感じだけどね。かっこ笑い。

ヘビの気持ち、あるいはヘビ母さんの気持ち。「このとき、ヘビはこんな気持ちなんじゃないかな」と想像しても、その想像はヒューマンの福谷がした想像なので、やっぱりヘビはその想像を見つめているだけなのかもしれない。「見つめて」なんて余計な言葉の強調もやっぱり気持ち悪い。見ているだけ、だったりするのにね。僕は軸をそこに置くことにしました。決めつけて演じたり、揺るぎなく成りきったりしないようにしました。

 

そうしたら、「何者にも成りきれない何か」になりました。それってどうなの、とも思うが、サリngさんが良しとしていたので、良しとしようじゃないか。しかも、結果的に僕のいつもの演技のやり口だったりする。でもでも、どうしてか辿り着いたところは違ってたね。ダブルキャストの一方、竹内さんの芝居を結局ゲネプロでしか見られなかったが、どっちかっていうと竹内さんの芝居の方が、「僕がやりそう」な気がしたりもした。

 

なーんてね。

 

#####

 

と、ここまで書いて、続きを書く時間がなく放置。まだまだ書きたいことがあるが、まずは明日のシンポジウムのお知らせでも。

 

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と、書いたものの、台本の執筆に取りかかってしまい、ブログ中断。現在、シンポジウムはすでに終了してしまった。最近、ブログを書ききれない。時間がないのだ。なんだかんだ言って、記事は数時間程度見直したい。

 

今でさえ、シンポジウムの感想ではなく、あれを経て浮かんだ考えをまとめるために文章を書きたい。そもそも、そういう使い方をするためのブログだし。今考えてるのはこんなこと。あ、今も時間がないので、文が荒いけどソーリー。

 

・ブームっていうのは馬鹿が集まること

・ブームを起こすために、馬鹿を集めて豊かになるか?

 

例えばJリーグって超人気だった時、馬鹿が集まってたと思うんですよね。ミーハーと言い換えてもいいですけど。それこそ「流行ってるから」で集まってたり。その入り口はめざさなきゃかもとも思うが、少なくとも、関西小劇場ブームが実在して、それが単に「馬鹿も芝居を見てた」「でも馬鹿だから流行が終わって離れた」だけなら、どうでもいいし、そのブームをめざすことに意味があるのかなとか思ったり。

多分土橋さんが冗談交じりに言った「衰弱ではなく、成熟ともいえる」ってこういう意味じゃない?とも思ったり。サラッと言ったので聞き逃しそうになったが、ものすごく端的に演劇の在り方への想いとか意見とか分析を表している。

もし仮に、「演劇を見に行くのがおしゃれ」だったんなら、おしゃれなんてただの流行なので、本当にどうでもいい。牧場に行くのがおしゃれな時代もたまには来るだろう。ボウリングなんて、今やダサいし。おしゃれなんて、単なる時代の運ゲー。当時のボウリングと今のボウリングにゲーム性の違いなんてないよな?

 

あー、ほんと文が荒い。あと少しで出発しなきゃだから。

 

テレビって、馬鹿でもわかるように作ってるし、馬鹿に好かれるように作ってるじゃないですか。って、よく聞くじゃないですか?これは偏見とかではなく、実際の作り手の声として、「高卒主婦を想定しろ」みたいなこと、たまに漏れ聞こえるし。ソースはないけど、探せば見つかるんじゃない?で、それって、どうなの?っていう流れもあるじゃないですか。

 

だから、より専門性とか、まあマニアックな番組作りをすると、逆にウケたり。

とはいえ、高視聴率をとるドラマは、ほんとにわかりやすくて、ほんっとにほんっとに間口広げまくりの馬鹿が見放題の作品じゃないですか。ユーチューブなんかも今すごいですよ。ほんっとに、馬鹿でもわかる、馬鹿が楽しめる、頭を使わない動画ばっかりで。

ま、でもこれは、作品自体を否定してるわけじゃなくて。僕自身馬鹿だし。

 

作品作りの姿勢として、「高視聴率をとるために」「ブームを起こすために」間口広げまくり馬鹿入りまくりブーム起こりまくりをめざすのって、ちょっと危険じゃない?って思うようなところがあるだけで。

 

あー、ごめん、ほんと荒い。馬鹿って乱暴に使い過ぎてる。

今、僕の言ってる「馬鹿」っていうのは、「らくちんしたがり」っていうニュアンス。この「らくちんしたがり」の定義も設定しなきゃだが、くそう、そんなに精査する時間がない。

 

普段ならこのブログは闇に消えるが、最近書けてなさすぎたし、

 

 

もうあかん!いったれ!

 

とりゃあ!

 

(了)

チケットを売らない役者に価値はないのか

お世話になっております。

 

役者はチケットを売るのが「当たり前」か。

今日、ツイッターでギャンギャン吠えて、自分でも驚くほど鮮やかに負けました。まあタカイさんとはそれなりにプロレスができると思って意識的に吹っ掛けたケンカだったけど、死ぬほどすぐ負けて笑いました。あのクソ野郎、つぶす。

 

ことの発端はこのツイート。

 

 

で、最終的な僕。

 

 

どうですか、この、負けっぷり。やりとりの詳細はツイッターをチェックしてもらうとして、僕、「ウガアアア」言うてますやん。こんな負け方するんですね、大人でも。「ウガアアア」言うたら終わりでしょ。これ、ほんまは「ちくしょう!今に見てろよ!」とか「今日はこれくらいにしてやる!覚えとけ!」とか書きたかったんですよ。でも、負けすぎて「ウガアアア」言うてもうたんです。語彙なくなってもうて。必死になってもうて。どうですか。僕はこんな自分が本当に好きです。

 

とまァ、負けたうえで、僕の気持ちをもう一回考えておこう。……チケットノルマの是非とか、なんだかんだ定期的にこういう話をしてしまうね。お客様には申し訳ないが、だけど、こういう裏側を見せる芸とか笑いって、2000年代の流行りだから許してくれるかな?

 

役者は演出の求めた芝居をやるのは当たり前で、「チケットを売る」のも当たり前

 

うむ。やはり引っかかる。えーと、まず僕は、ネガティブです。あと、自分のことを弱者の味方だと思っています。劣等感の塊で、クラスでイケイケのアイツや、ディスコでノリノリのカノジョにはなれなくて。最低最悪なドブみたいな人生を送っている人の、味方だと思っています。まず、僕のそんな「性癖」を前提として。

 

役者は演出の求めた芝居をやるのが当たり前で、「チケットを売る」のも当たり前だとしたらさ。もしも僕みたいな「能力のない演出家」によって「退屈で面白くないお芝居」をつけられて、それを忠実に再現した役者がいたとしてさ。だけど、その人は役者のあるべき姿としてチケットを100枚売ってさ、お客さんのほとんどに「なんか、必死に呼ばれたからきたけど…前衛的で変な芝居で、面白くないなァ…」と思われて、「この人の“オススメだから見に来て!”は信頼できないから、次からは断ろう」って思われたら、最悪じゃない?

 

例えば僕、今突劇金魚に出ているけど、僕の出てるシーンって15分間くらいで。僕が役者としてなんとかできるところって、その15分間しかないじゃないですか。もしかしたら、その15分間くらいは脚本や演出も退屈だとしても「役者の力!」でなんとかできるかもしれないけど(そんなこと、果たしてできるかな?)、トータルの完成度って、どうしようもないところじゃないですか。「そんな芝居に出るのがおかしい!」というのはもちろんだけど、まあやってみないとわからなかったりするじゃないですか。小劇場なんて特に。(突劇金魚はだいぶ良い作品なので、おすすめです。)

 

だから、もしも役者が「この作品には自分のお客さんを呼ぶべきではない」って判断したとしたら、それは許されてしかるべきだと思うんですよね。

 

うーん、難しい。言いたいことが女子高生みたいにいろいろ出てくる。

例えば「当たり前対決」をするなら、拘束期間に見合ったギャラを払うのは「当たり前」だし。その当たり前を守れていないとき、やっぱり「チケットを売れ」が「当たり前」だなんて主張しがたい。こちとら「台詞を覚えろ」ですら、「拘束期間に見合ったギャラ」を払えていない以上、うまく喉から出てこないのに。稽古を休む理由だって、聞けないまま卑屈な笑い方をするだけなのに。

 

ま、それにタカイさんのツイートは確実に「脚本も面白い、演出も面白い」ことが前提だと思うので、僕の指摘は的外れですけど。すでに敗北はしているので、この記事で噛みつくつもりは一切ないです。僕自身がどう思っているのかな、っていう検証です。……でもね、結局タカイさんはパーリーピーポーなんですよ。優秀が、有能が前提だからムカつくんです。噛みついてもうた。コイツはねェ、弱者の気持ちが分からないんですよ。優秀だから。有能が前提で色んな事言うから。あのね、ツイートの途中で僕「大手広告代理店か!」っていう悪口を書いちゃいましたけど、あれはわりとマジですよ。

こういう人がね、「なんでできないの?」って言葉を使うんです。

 

ほら、僕たちは「なんでできないの?」って言われて、辛かったじゃないですか。「こうやってやんねん!」といって一輪車をスイスイ漕いでったタケル君を見て、泣きそうになったじゃないですか。そんな気持ちがこいつにはわからないんですよ!!

 

タカイさん「……チケット売る努力はしてくださいよ。メール送るくらいはできるじゃないですか?え、電話帳に20件しか知り合いがいない?まあじゃあその20人には送るとして、アドレスなんて聞けばいいじゃないですか。ほら、あの劇場行ったことあるでしょ?あの管理主さんとか声かけました?声かけたらいいじゃないですか。なんでやらないんですか?いつも、ちゃんと客出しのとき、声かけてくれたお客さんの名前とか聞いてます?聞いたらいいじゃないですか。連絡先交換するんですよ。DMなんかよりよっぽどダイレクトで、来てくれることありますよ。なんでやらないんですか?ちなみに今、チラシ持ってます?……なんで持ってないんですか?僕、常に30部は持ち歩いてますよ。ツイッターやってます?なんでフォロー増やさないんですか?まずフォロー増やして、網を張るべきでしょ?毎日予約フォーム投稿してます?っていうか、せめて知り合いを増やす努力はしましょうよ。人間関係ですから、すべては。フェイスブックで過去の同級生なんていくらでも見つかるでしょ。コミュニケーションする努力を、いや、できないじゃなくて。できないんじゃなくて、それはやらないんでしょ?やってないだけじゃないですか。やってくださいよ。できないじゃなくて。いや、もうそんなん役者じゃないでしょ。価値ないじゃないですか」

 

僕「ウワアアアアアアアア!!!!!」

ナイフを脇腹にグサッ!ブシュ!!血ィビャアアアアアアア!!

 

タカイさん「ぐっぐぁ…なにしてるんですか……!こんなことして…!僕に、あなたの劣等感押し付けないでくださいよ…!僕…ぐぅ……間違ったこと言ってますか…?」

 

僕「キョアアアアアアア!!!!!!」

グッサグッサグッサグッサグッサグッサ!!!!!

 

……。

 

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タカイさん、すみません……。

なんか……追い詰められすぎて殺してもうた…。すみません……。

 

僕もさすがに……殺すとは思わなかった……。

これ、やっぱり、僕、殺してしまうほど、そこに罪悪感あるんだね。タカイさんの言う「当たり前」を実行できていないことに、すごく罪悪感があって、毎日、それを見ないふりをして生きているんだわ。そうかあ。

 

ちくしょう。

 

ちょっともうこの話やめよっか。僕が全然客観的じゃない。タカイさんメッタ刺しにしてもうた。……イタチの最後っ屁みたいな過激な悪口を言ってみようかな。

 

「もしかして、アマサヒカエメの山咲くんの失踪って、今の僕と、同じだったんじゃない?」

 

とまあ、いきなり笑えないレベルのジョークプロレスをぶっこんで、次会うときにプルプル震えながら、このブログを終わります。失踪の件は全く知らないけど、アマサヒカエメさんって旗揚げHEPで700人以上動員してるんですよね。そこには「当たり前」があって、本当にいっぱいいっぱいの「当たり前」があったと思うんですよ。

 

でもさ、さっきの僕がタカイさんになり切って書いた長台詞、ある種、ほんと「当たり前」だったりするでしょう?関西小劇場の役者さん、胸が痛くなる人多いでしょう?

 

僕は、あなたたちの味方ですけど、味方だからと言って、僕たちに未来はないかもしれません。あー…。つらいつらい。みんな、チケット売ろっか。

 

さあ、頑張ろうぜ。

 

匿名劇壇の次回公演の詳細はこちら。予約、始まってます。

https://tokumeigekidan.jimdo.com/next/

 

どーしようもないお前らを、俺だけは愛してるからな。

価値なんかなくたって、俺だけは愛してるからな。

 

愛してるんだからな!!!!!

 

(了)

 

P.S.なんか、球磨川禊みてぇだな。

バズり研究の短いやつ

 お世話になっております。

 

最近、「劇場に花を送るより、多くの人間で観に来てもらった方が嬉しい」という意見があって、それに対して「花だってサイコーだろ」とかなんじゃらほいじゃら意見を見かける。このあたりの内容については、あまり興味がなかったのでスルー。

個人的には「花だって嬉しい」っていう意見はそりゃ好かれる意見だし、その意見で嫌な思いをする人なんて誰もいないから、そりゃそうだろと思った。好感を持たれる意見を言って、好感を持たれてて、ずりぃぜと思いました。

ただ、なにか、正体を見つけた気がした。バズるなり、炎上するなりの正体は、多分これだ。

 

「代表者」になること。

 

これ、僕がもっとも忌避してること。なにより気を付けていること。でも、バズったり炎上したりするのって、大抵「代表者」なんですよ。

どういうことかというと、例えばこのツイート。

 

 

これ、制作目線と書いてるけど、「役者代表」なんですよ。「この国にいるほとんどの役者代表」なんです。一連のツイートで「この国のほとんどの劇団を代表して、代弁します」的な書き方になっていたりするんです。制作者・黒田哲平さんの個人の意見に見せかけて、「代表」になっているんですよ。それが自覚的かどうかはわからないですけど。

 

だから、多くの人に伝わるんです。多くの人を巻き込めるんです。

 

ぽんと、膝を打ちました。僕は、こういうことは良くないと、できるだけ避けているんです。たまに「でも、僕多数派ですよ」と言い訳っぽく付け足すことはしちゃいますけど。できるだけ、個人の意見にしようとするし、それさえもバリアバリアでごまかします。らんまらんまで日が暮れます。これじゃ一生バズれないんだな、と。

 

昔、特定の批評家を名指し同然でディスって、70リツイートくらいでした。どんな書き方をしたのか忘れちゃいましたけど、たぶん、いち個人のいちエピソードに留めてたと思うんですよね。それをこう「批評家をあてにしてる作り手なんていない」とか、「作り手代表」な書き方をすると、もっと炎上したと思うんですよね。

(ちなみに、僕が書いたのは「あてにしてる、してない」とかいう話じゃなく、もっとほんとに個人的な小さなエピソードですけど。便宜上。)

 

もう30歳近い大人なのに、いまだに「常識」とか「当たり前」、「普通」に嚙みつくような性格だから、そういう言い方ができないっていう。僕がチンケってだけの話ですけど。

 

どっかの社長が、「私のツイートを読んでいない者は不採用です」ってツイートしてたんですよ。多分、それだけならバズらないんです。でも「常識です」って書いてるんです。急に、「世の社長代表」になるんです。だから、炎上したんです。だと思いません?

 

多分、しばいのまちのチラシのやつも、山口さんの言葉の端々に、「世の小劇場チラシ制作者代表」が見えてたんじゃないかなあ。ちょっと覚えてないですけど。でも、添削したとき、そこらへんを修正した気がする。「みんな」じゃなく、「僕」。

でも、それじゃ小さくってねえ…。

 

でも、個人の意見でも炎上することがたまにあって。

例えば、茂木さんのやつとか。

 

「日本のお笑いはオワコン」、全然意見としてありだと思うんですけどねー。

「みんなもそう思うでしょ?」が見え隠れしてたのかなぁ。

 

それとも、あまりに少数派な意見は、個人的であれ炎上するのかなあ。

 

僕がめざせるとしたらそこだけど、それはちょっと、あまりに居た堪れないぜ。

 

(了)

逆転サヨナラ満塁エラー

 青空の下、僕は小学六年生だった。

 ゲームは9回の裏。1点差で、僕たちが勝っている。この回を抑えれば勝利だが、ツーアウト満塁。ヒットは許されない。僕は、マウンドの樋口健を眺めていた。真剣な顔つきだった。キャッチャーのサインにゆっくりとうなずいて、大きく振りかぶる。渾身の力を込めて、ボールを投げた。代打の長身がバットを振る。カキーン、と気持ちの良い音が鳴って―――。

 

 少年野球において、ライトは馬鹿にされがちである。ライトは、一番ヘタクソが守るところだと思われがちである。そして事実、そうであることが多い。地域の小さな野球チームでは、所属するもの全員がレギュラーメンバーになることがほとんどだ。どうしても運動能力の高い者から順に内野を守らせることになるし、右バッターがほとんどであるからして、レフトかライトならやはりレフトを優先して守らせる。よって、ライトは一番ヘタクソが守ることが多いのである。

「えー、俺、ライトなんてヤだよ。だっせー」

と言ったのは、中田壮馬だった。前述したとおり、ライトにはネガティブなイメージがある。中田壮馬はそれを嫌ったのだろう。しかし、その言葉に監督が激怒した。壮馬の頭を強めに叩いて、叱った。監督は、怒ると怖い。怒ると怖いので、怒っていない時も怖い。

「ポジションに優劣はない。野球をなめるな」

 そう言って、僕を指さした。

「川口は、ヘタクソでも文句を言わずにひたむきに努力しているだろう。壮馬、俺はお前の技術を買っている。川口よりも、壮馬の方がうまいと思っている。しかし、そんなふうに野球をなめるやつはいらない。この試合は、川口にライトは任せる」

 壮馬は泣きじゃくりながら謝ったが、許しは貰えず、結局僕がスタメンでグラウンドに出ることになった。僕は、野球が下手だった。しかも、好きではなかった。監督は僕をひたむきに努力していると言ったが、そんな覚えはない。ただ、意志薄弱なだけだ。親から言われて始めた野球を、理由なく続けているだけだった。得意でもなく、好きでもないのに。

 実際、グラウンドに立っていても、何の感慨も湧かなかった。できるだけ、ボールが飛んでこないことを祈っていた。練習して、うまくなりたいと思ったことがないわけではない。しかし、どうにも野球のことが好きになれなかったのだ。正確に言うと、野球をプレイすることと、野球の試合を見ることが好きになれなかった。

 僕は、漫画が好きだった。

 キャプテン、ドカベン巨人の星おおきく振りかぶって、MAJORなどが好きだった。クロカンのような監督もの、タッチのような恋愛もの、グラゼニのような金銭もの、どれもこれも好きだった。好んで、野球が題材の漫画を選んでいた。同じチームのメンバーが、セリーグパリーグの話をしていても僕にはわからない。そんな実在のチームより、明訓高校や墨谷二中に興味があった。星飛雄馬三橋廉に興味があった。すべての現実の野球に興味がなく、すべての架空の野球を愛していた。

 ただし、僕は、どちらも選ばなかった。上杉達也やイガラシキャプテンのようなプレイがしたいと練習に励むわけでもなければ、茂野吾郎や黒木竜次のような熱い男を描きたいとペンを走らせるわけでもなかった。ただの、野球漫画好きだった。だけど、そんなものだろう。小学生のころから夢に向かって走っている奴なんて、稀有だろう。そんなやつがいたら、プロ野球選手や漫画家になってしまうじゃないか。僕は、―――。

 

 ボールが、降ってきた。逆光だった。言い訳になると思った。ボールは取れなかった。相手チームのランナーが二人、ホームベースを踏んだ。逆転サヨナラエラー。僕のエラーで、チームが負けた。

 特段、これは決勝戦ではない。引退試合でもない。だけど、マウンドの樋口健は歯を食いしばって僕を睨んでいた。ベンチへ戻ると、本来のスタメンだった中田壮馬も僕を睨んでいた。負けたことを、本気で悔しがっていた。

 監督から軽く慰められて、僕は家に帰った。僕は、悔しくもなんともなかった。ただ、申し訳なかった。自分の部屋で、漫画を開く。ふと、気が付いた。

「この架空の世界に、僕がいたら、どんなに場違いなんだろう」

 今頃、樋口健はシャドウピッチングをしているだろう。中田壮馬もライトに誇りを持ち、素振りをしていることだろう。僕が漫画家なら、それを描く。僕は読者で、それが見たい。そうか、と気が付いた。僕が現実の野球を好きになれないのは、僕がいるからだ。僕という余計な登場人物が、この世界の野球を退屈にしているのだ。僕が野球漫画を好きなのは、そこに僕がいないからだ。

 

 中学生になって、僕は野球をやめた。野球をやめてから、少しずつプロ野球を見るようになった。高校野球を見るようになった。面白かった。ときには、漫画よりも面白かった。現実の野球は、こんなに面白かったのかと気が付いた。

 

 僕さえ、関わらなければ。

 

 

END

 

 

 ……。

 

 ……ふーん。

 ……へー。

 

 …………………………。

 

 ……なんだよ、それ。

 

 僕はバットを握って、庭に出て、素振りを始めて、それからはまた別のお話。

 それからが、僕の野球のお話。

 

(了)

はじめしゃちょー、木下ゆうか、youtuberの生き様

お世話になっております。大阪で劇団をやってます。

 

はじめしゃちょー、浮気疑惑(というより暴露)の件について。

昨年は、芸能人の浮気がワイドショーを賑わせました。と、youtuberも御多分に漏れず、youtube内でワイドショーの役割を担っている人たちとその視聴者が賑わっています。はじめしゃちょーといえば、日本一のyoutuber。そりゃ、話題性抜群です。しかもお相手がこれまた「木下ゆうか」というyoutube内では名の知れた大食いパフォーマー

 

お二人が交際関係にあったというだけでもニュースなのに、よりによって「みずにゃん」という“まともな神経をしていたらある程度距離を取っておく系配信者(褒めてます)”に木下ゆうかが電凸をし、洗いざらい話してしまうという大事態に。この「みずにゃん」という男、他人の揚げ足取りを面白がる炎上系配信者なのだが、ラサール高校出身。頭が良くて性格が悪いやつという、一番気を付けなきゃいけないタイプの男だ。

 

そもそも、みずにゃんははじめしゃちょーの「れいな」と「あおい」という女性との二股疑惑について取材配信をしていたのだ。それを見た木下ゆうかが電凸をしてしまうという、なんとも恐ろしい泥仕合。はじめしゃちょーとしてはコリャタマラン状態である。

想像すると、ちょっと笑える。さすがに焦る展開だ。

 

木下ゆうかは泣き声であった。表に立つ仕事をしている中、諸々の手続きを取らずにこういった行動をとってしまうあたりは軽率も軽率だが、そこはyoutuber。こういったことが可能だからこそ、身軽で新しい職業なのだ。本来、しがらみから解き放たれ、伸び伸びとできる場所がここだったはず。大手事務所やタレントイメージに縛られないことが、youtubeの良さだったはず。彼女もはじめしゃちょーもUUUMという最大手の事務所所属だが、基本的には「んなこたカンケーねー!」をしてもかまわないと思う。

もちろん、企業の広告塔なんてことしていると、そういうわけにもいかないが。もともとは、「そういうコトに縛られないところが、良さ」だったんだから、立ち返ればいいだけだ。軽率は軽率だとしたうえで、木下ゆうかを擁護はしたい。むしろ、こうした発言が可能なこの健全空間を守っていきたい。実際、ジャパンのyoutubeはどんどん不健全な方向へ進んでしまっているのだ。「そういうこと、ネットで軽率に言うなよ!」という意見は、圧力をかける流れに拍車をかける恐れがある。

ここは「いいよ、その軽率!ナイス軽率!」と歓迎しておきたい。

「30歳を超えた女性が恋愛沙汰をネットで~」というような意見もあったが、それはもううるせぇよでいいだろう。誰なんだお前は。幼さジャッジマンか。

 

ところが、はじめしゃちょーはきっとそうはいかない。なんていったって日本一のyoutuber。色んな広告を背負っている。そういう活動の仕方を選んでしまったのだから、仕方がない。きっと謝るんだろうな。

でも、さっき言ったように、いつでも「んなこたカンケーねー!」をしてもかまわないと思う。むしろ、そうしてほしい。浮気をした分際で、謝罪したり、説明したり、そんなのはもうたくさんだ。浮気をする分際なのだから、「らしく」生きればいいのだ。

それができる場所なんだから。

 

##

 

と、ここまで書いていたが、先日はじめしゃちょーが謝罪動画をアップした。

人気者である彼を擁護する声は、すでに多数上がっている。そりゃそうだろう。人気者なんだから。しかし、欺瞞の道を選んだか。好きなことで生きていけばいいのに、そうもいかないYoutubeジャパンは気持ち悪いねェ。木下ゆうかも、気持ちよく生きればいいのに。

 

「恋愛なんて当人同士の問題。他人が口をはさむことではない」という正論も見かけた。

 

この正論、僕は少し思うところがある。

基本的に、すべての問題は他人が口をはさむことではない。色んな犯罪だって、結局は当人同士の問題だ。当人じゃ解決できないから、代理として国が罰しているだけに過ぎない。この世に巻き起こるすべては「当人同士」の問題で、他人が口をはさむことではない。だけどそうはなっていない。他人が口をはさみまくりだ。

それは少し角度をかえて考えると、こんなことだって言えるからだと思う。

「はじめしゃちょーの浮気を知って、不快な気持ちになった私」と「はじめしゃちょー」だって、十分当人同士でしょ、という理屈だ。「誠実を売りにしていたあなたを信用していた私」と「実は誠実ではなかったあなた」は、当人同士だ。むしろ、そこに口をはさんで「あなたは関係ないでしょ!」という輩こそ、関係がないとさえ言える。「これは、私とはじめしゃちょーの問題です!口をはさまないでください!」ってね。

もちろん、極論だけど。あぶねぇオタクの理論だけども。筋は通っている。

 

こういう話のとき、「あなたに何か迷惑かけましたか?」的な正論もまかり通っていて、不愉快なんだよね。それこそ、「僕が、ベッキーと川谷のことを騒ぎ立てて、あなたに迷惑をかけましたか?」と言いたい。「不快です」とでも言われりゃこっちのもん、「僕も不快だから、こうしています」ってね。

いや、まあ個人的には恋愛沙汰には興味がない方だけど…。

 

なんかこう、「他人の恋愛事情に~」論者が、やけに正義面かましてて、いらつくだけなんだけど。逆に「不貞行為だ!ゲスだ!」と正義面かましてるやつも嫌いなんだけど、こっちはわりと少なくて。実は、善も悪も綯い交ぜに騒いでる人がほとんどだから。綯い交ぜ遊びをしているところに、正義面がくると白けるんだよね。

浮気を叩く正義もあれば、無関係なやつは黙ってろという正義もあるんだよ。だから、そんなことどうでもよくて。どーせ、酒の肴にする程度のことなんだから。

うーん、話がそれたね。正義面がむかつくという話でした。

 

## 

 

PDSくんのスキャンダルも懐かしいし、マホトくんももろもろも懐かしいけど、今回のこのスキャンダルは、転換点になってしまうんじゃないかなァ。

ジャパンナンバーワンのはじめしゃちょーは、アイドルの道を選んだ。未来があるかどうかは知らないけど。タレントの道と言ってもいいかな。テレビタレントの道。

PDSくんもマホトくんも同じ。

 

奇しくも、最近ヒカキンくんはこんな動画をアップしていた。

www.youtube.com

 

ヒカキンくん、まさに面白いところで立ち止まってくれている。

 

例えば、PDRさんやシバターさんは、タレントじゃない。タレントの道を拒絶したものだ。彼らは、完全にYoutuberとしての生き方を驀進している。こっちも、未来があるかどうかは知らないけど、前例がないだけワクワクする。はじめしゃちょーのコースはテレビのタレントコースなので、大体知ってる人になるコースでしょ。それはもう知ってる。あの有名な、キラキラした人になるだけでしょ。上地雄輔さん的な。

 

もし、はじめしゃちょーが、youtuber、動画クリエイター、配信者、なんでもいいけど「タレント、アイドル」を拒絶していれば、謝る必要などなかったはずだ。いや、まあ、謝るだろうけど、もっと気楽に話せたはずだ。

 

「あのー、ほんとすみません。ちょっと、調子に乗った部分が、あったかもしれません。っていうか、調子に乗ってました。ちゃんと、その、関係してる人には謝って、いやもう謝って済むことじゃないかもしんないんですけど、あの、ごめんなさいとお伝えして。」

 

で、良いはずだ。

なぜそうしなかったか。なぜ台本の台詞をなぞったか。なぜ会見の真似事のような動画を作ったか。テレビでもないのに、テレビみたいに。一台のカメラで、ひとりきりなのに。大仰に、それっぽく。これは、彼が「そういう道」を選んだということなんですよね。

 

…こういうのほんと俺に台本書かせてくんねーかな…。定型文じゃなく、話し言葉の謝罪のほうが絶対に効果的ですよ。演技指導もするし。それこそ三宅洋平みてーなキャッチーで砕けた演説とか、俺のお家芸っすよ。くだけ謝罪文ジョブ、待ってます。

 

んで。

これは好みの話。僕は、そんなyoutubeは退屈なので、ぜひやめていただきたい。はじめしゃちょーが牛耳る方向性のyoutubeは、ちょっと退屈だ。

 

さあ、どうなる、youtuber?

 

群れるなよ…楽しんでるんだからな…!

 

(了)

 

p.s.ちなみに、僕はクソみたいな人生を送っています。

恋なら盲目、愛なら中毒。

恋なら盲目、愛なら中毒。

 

 有料のアダルトライブチャットで見つけたパラちゃんは、中原唯奈にそっくりだった。顔や髪形や話し方、さらには目元のほくろまで、中原唯奈にそっくりだった。視聴者に煽られて、上半身を露わにするパラちゃん。乳房もそっくり、と言いたいところだったけれど、初めて見たのでそれは知らない。それに、こんなふうに煽情的でいやらしい表情をする中原唯奈も、僕は知らなかった。ポイントが無くなってきたので、すぐに追加した。

 可愛いね、というコメントが流れる。彼女はそれを読み上げて、ありがとうと言った。パラちゃんはずいぶん慣れた様子で、五百人余りの視聴者をあしらっていた。「オナニーしないの?」「よだれ垂らして」などの下卑た注文に微笑みで返し、「千人いったらオナニーするからね。みんな、それまでイっちゃダメだよ」と言った。ライブチャットの収入は、どれだけ視聴者がポイントを消費するかで決まる。彼女は、ここでのビジネスを心得ているようだった。彼女の意のままに、一分で約五十円が消費されていった。

 僕は、興奮していた。以前から密かに中原唯奈に想いを寄せていたからか、パラちゃんがいやらしいからかはわからない。これは、中原唯奈本人なのだろうか。それとも、似ている別の人物なのだろうか。興奮している自分に戸惑っているように、股間は微妙な反応を示していた。鼻息は荒く、体温も上昇しているが、股間だけが反応を迷っていた。

 僕は、中原唯奈にラインを送ることにした。数十秒後、パラちゃんはスマートフォンを手に取って、ソファーに投げ捨てた。……この時間のずれは、ライブ配信のタイムラグなのだろうか。それとも、今パラちゃんが受信した「なにか」は、僕の送ったメッセージとは違うものだったのだろうか。ラインには既読がついているし、パラちゃんのスマートフォンカバーは、中原唯奈のそれと同じものだったけれど。彼女はどこからどう見ても、中原唯奈そのものだけれども。そしてきっと、事実、中原唯奈なのだろうけれど。

「それじゃ、千人いったから、オナニーするね」

 パラちゃんはそういって、下着の上から股間に手をあてがった。パラちゃんの指が艶めかしく動き出す。僕の股間は、なおも反応に迷っていた。中原唯奈だったら勃起するのか、パラちゃんだったら勃起するのか、それさえもわからない。僕はいま、何を求めているのだろう。僕は、この子がどっちだったらいいんだろう。この子がどっちであることを、僕は望んでいるのだろう。「今日は電マも用意してるんだよ」と、パラちゃんは言った。コメントが盛り上がる。電マの使用を囃し立てる。「でも、電マ、すぐイっちゃうからなァ」と、パラちゃんは笑った。そして股間に電マをあてがい、宣言通りすぐに嬌声をあげ、身体を痙攣させた。同時に果てた男が大勢いたらしく、「出た」などのコメントが流れ出す。そして、視聴者数も一気に減った。現金なものである。

「出ちゃった?でも、まだ出るよね?うふふ」

 彼女はすぐにフォローした。これで、何人かの男は視聴を続けることだろう。

 彼女は、実に魅力的だった。いやらしさだけでなく、気配りがあった。ライブチャットを覗いている男たちを蔑むような言動は一度もしない。むしろ、しきりに感謝を口にしていた。「見てくれてありがとう」と、笑顔を絶やさなかった。そしてなにより、彼女自身が望んで、楽しんでこの配信を行っているということが、画面からありありと伝わってきた。もしかすると、違うのかもしれない。だけど、そう思わせることに見事に成功していた。例え、「本当はこんなことしたくないけど、お金のためにやっている」のだとしても、パラちゃんは微塵もそんな気配を出さなかった。ただひたすら、えっちで、いやらしくて。

 

 だからこそ。

 中原唯奈はそうではない。中原唯奈は、辛いはずだ。中原唯奈は、望んでこんなことをするような女の子ではない。もしかすると、誰かに脅されているのかもしれない。あるいは、何か心の病を抱えていて、承認欲求が高まって依存症のような状態になっているのかもしれない。ただ、お金に困っているのかもしれない。

 だったら、中原唯奈を救えるのは、僕だけだ。

 

 極太バイブでパラちゃんが昇天するのと同時に、僕も無理やり精液を出した。勃起も曖昧なまま、搾り取るように出した。これで僕に残っているのは、純粋な愛だけだ。ちくしょう、憎きパラちゃんめ。中原唯奈にとり憑きやがって。

 

 唯奈ちゃん、今、助けに行くからねっ!

 

 家を飛び出して中原唯奈の元へ走っていくさなか、僕はなぜか、ファンがアイドルを殺した事件のことを思い出した。全く関係がないのに、不思議だなぁ。

 

(了)

「ゆっちーを捨てにいく」感想

お世話になっております。

 

がっかりアバター「ゆっちーを捨てにいく」を観ました。とても面白かったので、感想という訳でもないが、感じた想いを綴っておこうと思う。がっかりアバターが自分にハマったとき、「わかるわかる、全部わかる」状態になる。これを僕はIQマックス状態と呼んでいるが、そこに連れて行ってもらえたのは「啓蒙の最果て、」という作品のみだった。

 

実は、そのほかのがっかりアバターの作品は、「アンディさん、やっちゃいましたね」と言って帰っていることがほとんどだったりする。初体験はスペースドラマの「あくまのとなり。」で、これはある一定のレベルで評価したけど、分析を超える感動みたいなものはなかった。というより、そんな経験ほとんどしない。稀なことに自分もクリエイターであることを忘れて、「IQマックスや…」と言わせてくれたのが、「啓蒙の最果て、」だったのである。

それ以外はほとんど「アンディさん、やっちゃいましたね」と言って帰っている。

この町バスも、キングオブシアターも、僕には良くわからなくって。

 

「啓蒙の最果て、」はすごかったのである。もしかすると、僕の観た回だけで、僕だけが感じた気持ちなのかもしれない。だけど、あの劇で「なんでこの子が泣いているのかわかる」「なんでこの子の目線が今あっちに向いたのかわかる」「こいつらの過去が全部わかる」「わかるわかるわかるわかるわかる」となった体験は、本当に刺激的だった。

……ちょっと過去を美化&戯画化しすぎているかもしれないが。

 

さて、「ゆっちーを捨てにいく」。

そんなふうに、僕はがっかりアバターの評価がグラグラだったので、今回はどっちだろうなとワクワクしながら劇場に行った。結果、がっかりアバターの面白い方のやつだった。なんども泣きそうになった。ちょっと泣いた。

もう、わりと序盤でこっちはIQマックスになっていたから、一場というか、最初のシーンが終わった時点でちょっと泣きそうだった。ちょっと泣いた。わかる、と思って。緑のもじゃもじゃのが出てきたときも、出てきた時点でちょっと泣きそうだった。わかる、と思って。

この緑のもじゃもじゃのこと、俺知ってる、と思って。キングオブシアターのときはよくわからなかった。でも今回は、こいつのこと全部わかった。

 

ゆっちーは、イマジナリーフレンドなんですよ。

がっかりアバターがハマったとき、完全に自分の個人的な体験とリンクさせて「わかるわかるわかるわかるわかる」モードに入るんです。あのね、僕もゆっちーを捨てにいったことあるんですよ。そうしないと、親が殺されるかもしないから、ゆっちーを捨てにいったことがあるんです。捨てにいった森で、歌って踊ったこともあるんですよ、僕。

僕もう、全部わかる。こいつらの体験全部わかるんです。

 

「わかるわかるじゃなくて、何がどうわかったのか説明してください」

そういわれても、困る。説明なんてできない。アンディさんの比喩表現に乗って、「ほら、ゆっちーを捨てにいったことあったやん!」としか言えない。僕はあの時間を経たことがある。森に行く途中でラーメン屋に寄ったことがある。そこで、ほんの少しだけ、心の準備をしたことがある。

 

端的に言えば、少女版ファイト・クラブだと思って観ていました。

まあでもそんなことはどうでもいい!ゆっちーは、俺のゆっちーだから!俺自体が「ゆっちーを捨てにいく」だから。俺自体が全部あの話。

 

広瀬さんはお上手だけど、やっぱり時間がなかったので、器用さばかりが目立っていた。それで十分だけど、不器用でいいから夢子さんもまた観たい。

長谷川さんは目を隠してたせいで、面白さが100倍になっていた。長谷川さんは目を隠すとあんなに面白くなるのか。すごくシンプルでよかった。長谷川さんは一生仮面をつけておいたほうがいいかもしれない。

 

とっても面白かったです。マル!

 

(了)